・平屋を計画したいと思っているけど、実際どんなメリットやデメリットがある?
・平屋を計画したときの失敗ってどんなことがある?
平屋人気が高まっています。60代を超えるご年配の方はもちろん、20代30代の子育て世代にも大人気です。
その理由は使い勝手がよく、子育てがしやすいからです。他にもたくさんのメリットがあり、平屋は様々な世代のニーズにこたえます。この記事を読んで『あれ?平屋ありかも?』と思う方もいるかもしれません。
一方で平屋の失敗例も少なくありません。計画(購入)した後に後悔しないようにデメリットも把握しておくことが大事です。
この記事では年間15棟の住宅を設計する現役建築士が平屋のメリットとデメリットをわかりやすく解説します。この記事を読んで平家への理解を深めて頂けたら幸いです。
平屋のメリット
平屋のメリットは以下の5つです。これが近年若い世代の方にも平屋が選ばれている理由です。
- 動線が良い
- 部屋の役割を変えやすい
- 断熱性が高い
- 耐震性が高い
- コストが安い?
動線が良い
平屋は動線が良いです。部屋に行くのに階段で上がる必要がなく、寝室もクローゼットも何もかもが同じフロアにあるワンルーム感覚です。
このワンルーム感覚こそ平屋の真骨頂と言って間違いないと思います。
アパートやマンションの間取りでこのワンルーム感覚を味わっている人も多々います。コンパクトにまとまった間取りの中で生活していると、なんでもすぐ近くにあるという感覚になり住みやすいと感じることが多いです。
ワンルーム感覚で暮らしやすい間取りにしたい方には特に平屋は理想的です。
部屋の役割を変えやすい
平屋は部屋の役割を変えやすいです。
それはメインの居住空間であるLDKを中心に各部屋同士が近いためです。
例えば子供部屋は『子供部屋』として使用される期間は限られており、その期間はおおよそ10〜18歳くらいまでの間です。
子供部屋を他の用途で部屋として使おうとした時に、
- 書斎
- 物置部屋
- 物干部屋
- 趣味部屋
- ゲストルーム
などが考えられます。このとき、どのような部屋として使うかによりますが、2階よりも1階にあった方が汎用性が高く使用しやすいです。
例えば物置部屋の場合を考えてみます。年を取るにつれて寝室は一階の方が良くなります。階段を上がるのが億劫になるのです。その時、子供部屋が一階にあれば物置部屋としてしようし易くなります。
断熱に有利
平屋は断熱に有利です。
これは外部と接している面積が2階建てと比較して小さいからです。
現代は性能評価、BELS、ZEH基準など省エネ性能を表す基準値が多くありますが、何れの計算値でも平屋は有利に働きます。
つまり、平屋の方が冷暖房費を抑えやすく、快適な温熱環境で過ごしやすいとうことです。
耐震に有利
平屋は耐震性に優れています。
なぜなら高さが低いほど家の強度を保ちやすいからです。
高さが高い方が揺れも大きくなります。つまり、平屋より2階建て、2階建てよりも3階建ての方が耐震性は不利になり、より多くの補強が必要になります。
高さが低い平屋は構造物としての強度を保ちやすいです。
平屋の方がコストが安い?
建築会社の見積もり方法によりますが、一般的には2階建てよりも平屋の方がコストが抑えられることが多いです。
その理由は建物全体の面積です。部屋数が同じであれば、階段や廊下がない分平屋の方が4坪ほど面積を抑えられます。
35坪の平家と35坪の2階建てを比較すると平屋の方が高いですが、31坪の平家と35坪の2階建てなら平屋の方が安いことが多いです。
ただし、平屋の方が基礎面積が大きい分地盤補強工事などがある場合は平屋の方が割高になるため注意が必要です。
平屋のデメリットやよくある失敗
それでは平屋の失敗例をご紹介します。ここには平屋のデメリットが集約されているので、計画に当たってはメリット以上に必要な項目です。
日当たりが悪い
平屋は日当たりが確保しづらいです。
なぜなら平屋は2階建てと比較すると1階部分の面積が大きく、南側の隣家や工作物との距離が近くなり影の影響を受けやすくなるためです。
土地に対して平屋を計画するときに重要なのは大きく3つあります。
- ①駐車場や庭の広さが問題ないか
- ②建ぺい率や採光計算など、法規上の問題がないか
- ③日当たりが問題ないか
①②の検討は当たり前に行いますが、③の検討は見落としがちなので要注意です。
防犯性が低い
平屋は防犯性が低くなると言われます。
理由は寝室が1階にあるからです。寝る時に1階の窓を開けるのは防犯性が下がるので抵抗があると思います。
あるからこそ逆に泥棒に入られにくいと言われることもありますが、やはり安心して寝れるのは2階です。
1階に寝室で窓を開けて安心して寝るためには、防犯対策が行われた通風格子や通風シャッターなどの対策が必要になるかもしれません。
土地の広さが必要
平屋を計画するには土地の広さが必要です。
理由は1階部分の面積が大きくなるためです。土地の利用計画を考える際には以下の3つが重要です。
- 駐車場や庭に必要な広さを確保する
- 採光計算や壁面後退など建築基準法に必要な隣地との距離を確保する
- 日当たりや住み心地を確保する
これらを考えると最低でも70坪ほどの面積が必要で、50坪もあれば十分な二階建ての計画とは大きく異なります。
土地を購入して家を建てる方は坪数が大きくなるほど土地費用だけでなく、固定資産税、不動産取得税などの税金も高くなります。
庭が狭くなる
平屋を計画するときは庭の面積をある程度諦める必要があります。
プールを出す、菜園をつくる、バーベキューをするといった程度なら3メートルくらい庭の奥行きがあれば十分です。
しかし、サッカーゴールやバスケットゴールをおく、テントを張る、ドッグランをつくるなどの用途を考えていくともっと庭の広さが重要になります。
必要な庭の広さを考えたときに、本当に平屋が計画できるかを考える必要があります。
音が響きやすい
平屋は音が響きやすいです。
平屋の場合は寝室や子供部屋がリビングのすぐそばにあるケースがほとんどです。テレビや生活音が響きやすいですし、トイレやお風呂などの水まわりの音も気になりやすいです。
気になりやすい場所は間仕切り壁に吸音目的で断熱材を入れる、または静音設計のドアに変更するなどの工夫が必要です。
トイレ、お風呂、楽器、テレビなど、音が出る場所は注意しましょう。
洗濯物干し、布団干し場がない
平屋は洗濯物干し、布団干しのスペースに困ることがあります。
なぜなら、平屋にはバルコニー(ベランダ)がないからです。
物干しスペースを確保するため、庭に洗濯物を干すための竿かけ台を立てたり、ウッドデッキを作ったりといった工夫が必要になります。その際布団をどこに干すかも事前に計画しておいた方が良いでしょう。
2階のバルコニー(ベランダ)って意外と活躍しているので、平屋の場合は代替案が必要なことを覚えておきましょう。
まとめ:平屋を計画するとき【なんとかなる問題】と【なんともならない問題】をわけて考える
平屋は効率の良い間取りを作りやすくとても住みやすいですが、平屋特有のデメリットには注意が必要です。
特に後からどうにもできない問題には注意が必要です。
平屋のデメリットのうち、【後から何とかなる問題】は以下の通り。
- 防犯性
- 防音性
- 物干し
- 布団干し
対して、【後からどうにもならない問題】は以下の通りです。
- 日当たり
- 土地の広さ
- 庭の広さ
平屋にするか、二階建てにするかを考える際、参考にしてください。