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サッシにシャッターは必要?『つけた失敗』と『つけなかった失敗』から考えるシャッターの要否

シャッターを付けようかどうか迷っている人に読んでほしい記事です。この記事を読んだら、シャッターは要る・要らないがはっきりわかると思います。

なぜなら、本記事ではシャッターの商品知識、メリットデメリット、また、実際に計画した方、住んだ方の実体験や失敗談を踏まえてご説明しているからです。

現役建築士である筆者の独自の見解も入れているので合わせてご参考にしてみてください。

シャッターは高額なので無駄に付けるのは勿体ないですし、住んだ後に後付けすると余分な施工費もかかるのでやはり勿体ないです。要否は計画の段階ではっきりさせておきましょう。

シャッターの役割

まずシャッターにはどのような役割があるのかをご説明します。

  • 防犯性
  • 防災性
  • 遮光性
  • 防音性
  • 防火性能

主な役割はこの5つです。

防犯性

シャッターを閉めることで防犯性能が上がります。

泥棒が室内に侵入する際、ガラスを割って室内に侵入するよりシャッターをこじ開けて室内に入る方が難しそうですよね?当然泥棒自身もそのように考えるため、シャッターのある窓から入ろうとは思わないと思います。

商店街などの店がシャッターを下ろすことで店頭の商品を守っている様に、家の中の安全を守ってくれるのがシャッターです。

防災性

シャッターは台風などの強風時にも安心です。

昔は雨戸があるのが当たり前でしたが、今はシャッターが雨戸の代わりとなっています。

災害のニュースは多いですが、日本中どこに住んでいても毎年1~2回は大雨強風に見舞われると思います。物が飛んできてガラスが割れるよりは…と考える人も少なくないはずです。

遮光性

シャッターは遮光効果が高いです。

カーテンをしっかりと閉めても、窓とカーテンの間には隙間が生じます。サッシに密着しているシャッターならほとんど光がもれません。

昼間に寝なければいけない夜勤の方などは特におすすめです。

防音性

シャッターを閉めることで防音性能が高まります。

外が騒がしくても室内が静かなであることを考えると、遮光性と同じく夜勤の方などは便利だと思います。

室内で楽器を演奏されたい方なども効果的です。窓から音が漏れることを防いでくれます。(換気口からの音漏れも大きいので防音タイプの換気口を計画しましょう。これは自分で建築会社に言わないとしてくれないので注意。)

防火性能

『防火シャッター』には防火性能があり、防火地域、準防火地域で活躍します。

防火地域、準防火地域では延焼ラインにかかる開口部(サッシ)は防火サッシにしなければいけません。※延焼ラインは隣地境界線、道路中心線から一階部分で3メートル、二階部分で5メートルです。

一般的には『防火サッシ』にするためにはガラスを網入りにしないといけないのですが、部屋のガラスが網入りって少し鬱陶しいですよね。

画像引用 :https://findpro.jp/glass/wire

そんなとき、防火シャッターを使用することで普通の透明ガラスが計画できます。

ちなみに、サッシメーカーのYKKは防火シャッターを使用しなくても『耐熱ガラス』で透明ガラスの防火サッシを計画することもできます。しかし、サッシの種類やサイズが限定されているのが難点。

防火地域や準防火地域で家を計画するときは防火シャッターが活躍しそうです。

シャッターの種類

シャッターを選ぶときには以下のような種類から選択します。

【材質】

  • スチール製
  • アルミ製

【動作】

  • 手動
  • 電動

それぞれの特徴を理解しておきましょう。

スチール製

スチール製のシャッターが一般的なのですが、その理由は金額です。スチール製は安価で最もリーズナブルです。

スチール製は腐食しやすいのでは?という声もあるかもしれないですが、今のシャッターはコーティングが優れているので大丈夫です。ちなみに自動車のボディもほぼ同じ材質です。

傷がついてコーティングが剥がれればそこから錆が発生する可能性は高くなります。この点も車のボディと同じですね。

アルミ製

アルミ製のシャッターはスチールに比べると高級品ですが、耐久性が高いのが長所です。

サッシの材質も一般的にはほぼアルミ。サッシがそうそう傷まないのと同じ理屈でアルミのシャッターもそうそう傷むことはありません。

ちなみに外部で使用する建築資材で最も腐食に強い金属はステンレスですが、ステンレスのシャッターはあまりにも高額なためほぼ流通していません。

手動

シャッターは手動操作が一般的です。

たまにしかおろさないシャッターは手動で十分だと思いますが、頻繁に下ろすのならば少し面倒です。

それにいざシャッターを下ろす前に室内から窓を開けなければいけません。その時に虫が室内に入ると言うのもデメリットです。

シャッターを使う頻度を考えて手動で良いかどうかを考える必要があります。

電動

電動シャッターは室内のリモコンで操作します。

手間がかからず、窓を閉めたままで開閉ができるのでとても便利です。

デメリットは故障です。電気部分の不具合があると動かなくなります。特に使用頻度が低いと電気は故障し易くなります。

あまり使わないシャッターを電動にするのは得策ではありません。

シャッターの失敗談

シャッターには以下のような失敗談があります。先人たちの二の轍を踏まないように注意しましょう。

金額が高い

シャッターは金額が高いです。

新築の場合だと、通常の一間サッシ(幅1600)で以下が相場です。

  • 手動スチール 8~12万円
  • 手動アルミ 10~14万円
  • 電動スチール 12~16万円
  • 電動アルミ 14~18万円

※メーカーや建築会社によって差が有るので、詳しくは見積もりを取られてください。

何か所も計画すると結構になってしまいます。

防犯性が逆に下がる

シャッターをつけると防犯性が下がることがあります。

シャッターを閉めることでそこからの侵入リスクは軽減できますが、不在であることを知らせてしまうという側面もあるからです。

泥棒はリスクを避けるので家主の不在を狙います。その際に閉まっているシャッターを確認して防犯対策がされていない小窓から侵入、というケースもあり得るのです。

そう考えるとシャッターをつけているけど閉めていない、というのが心理的には効果的だと思いますが、それだとシャッターをつけている意味がないですね。

修理費用が高い

修理費用を考えた時、窓ガラスよりもシャッターの方が高額になります。

防災目的でシャッターをつけても修理費用が窓ガラスの2~3倍掛かったらあまり使わなくなるかもしれません。破損を躊躇して閉めなかったら防災の意味がなくなります。

ちなみに、ペアガラスが割れるなんて言うことはめったにありません。成人男性のフルパワーで叩いてもなかなか突き破れるまでは割れないほど頑丈にできています。よほどの強風地域を除いて、防災目的でのシャッターはあまり意味がありません。

個人的には、防災目的ではシャッターをつけるより窓ガラス自体の『耐風圧性能』を拘った方が効果的です。風圧性能はカタログに表記されているので参考にしてみてください。

使う頻度を考えて商品を選定

よく使うシャッターを手動にすると、手間がかかるし、開閉の度に虫が室内に入ります。使

用頻度が高い場所は電動にしましょう。

対して、あまり使わないシャッターを電動にするとすぐに電気部分が故障し易くなります。たまに使おうとしたときに壊れていたでは高い電動にした意味がありません。

電気は使わないと傷むというのはシャッターに限らず全てにおいて共通して言えることです。あまり使わないけどシャッターをつけたいというときは手動にしましょう。

まとめ:シャッターを『おすすめするとき』と『おすすめしないとき』

『シャッターはおすすめ?おすすめじゃない?』の問いに対しては、『状況による』と言うのが答えです。

【シャッターをお勧めするとき】

  • 遮光をしたいとき(夜勤の方など)
  • 防音したいとき
  • 透明ガラスにしたいとき(防火地域、準防火地域の場合)

【シャッターをお勧めしないとき】

  • 防犯目的でのシャッター(防犯性は意外とない)
  • 防災目的でのシャッター(ペアガラスで十分な強度がある)

なんとなくで高額のシャッターを計画するのは勿体ないです。要否をしっかりと考えて計画しましょう。