・階段って計画次第では危なくないの?
・リビング階段って実際どうなの?
・階段の計画で失敗しないためにはどんなことに気を付ければよい?
この記事を読んで頂くと新築でよくある『階段の失敗』を防ぐことができます。
ありがちな新築の階段の失敗としては以下の4つが挙げられます。
- 危険な階段
- 冷暖房の効きが悪い階段
- 天井が低く感じる階段
- 階段下の使い勝手が悪い階段
現役建築士がこれらの原因と対策を考えて解説していきます。
階段は立体的な空間把握力が必要なため、計画が難しいです。それだけに失敗も多いのです。
階段を後々やり直すなんてほぼ不可能です。この記事を読んで階段で失敗しないための法則を学んでください。
知っておくべき危険な階段
階段で最も気を付けなければいけないのは『危険を回避する』ということ。
階段は家の中も最も危険な場所、ケガをするリスクが高い場所です。
厚生労働省の調べによると、平成21年家庭内事故で亡くなった人は12873人。そのうち、2673人(20.8%)もの割合の方が『転倒・転落』で亡くなっています。
階段での事故はその中の一部ではありますが、軽傷を負っている人もたくさんいるはず。危険な場所であるという認識をしっかり持ちましょう。
具体的な方法を3つ紹介
安全な階段を計画するために注意が必要なのは以下の3つです。
- 蹴上寸法と蹴込寸法
- 手すりを外側につける
- 直線ではなく折れ曲がった階段
順に解説します。
蹴上寸法と蹴込寸法
- 蹴上(けあげ)寸法…階段一段当たりの高さ
- 蹴込(けこみ)寸法…階段一段の奥行
階段の緩急はこの二つの寸法で決定します。
『え?こんなの建築会社が良いように考えてくれるんじゃないの?』と、思いましたか?
親切な建築士は考えてくれますが、普通は考えてくれないです。
なぜなら、理想的な寸法と建築基準法で規定されている寸法には大きな差が有るからです。
【理想的な寸法】※筆者の主観
- 蹴上…19センチ以下
- 蹴込…22センチ以上
【建築基準法】
- 蹴上…23センチ以下
- 蹴込…15センチ以上
一段当たりは数センチの差でも14~15段になると大きな差となり、スペースを取ります。
階段にスペースが取られると他の部屋を充実させるのが難しいし、無駄のないコンパクトな間取りを作るのが難しくなります。
つまり、安全な階段を設計して、かつ良い間取りを作るのはとても難しいんです。
かといって、他の部屋のしわ寄せを階段で解消すると使い辛くて危険な階段になります。階段で妥協は禁物です。
手すりを外側につける
階段には手すりが必須です。
両側に設けるのが理想的ですが、有効幅も狭くなってしまうため片側だけのパターンがほとんどです。
その際、必ず外側に付けましょう。
階段を下りるときに利き腕側にあった方が良いという考え方もありますが、それよりも外側にあることの方が重要です。
階段はインコースよりもアウトコースの方が広くて安全だからです。
特別な理由がなければ、安全のために手すりは外側に付けましょう。
直線ではなく折れ曲がった階段が安全
直線の階段は危険です。足を踏み外したときに一番下まで転げ落ちてしまう可能性があるからです。
直線よりL型、L型よりコの字型の階段が安全です。
その際、折れ曲がるところが踊り場であると理想的です。角を斜めに割るタイプの階段もありますが、踏み面が小さくなり易いので危険です。
間取りの都合も大いに関係しますが、なるべく直線の階段は避けましょう。
リビング階段のメリットとデメリット
リビング階段についてはネガティブな意見も多く存在します。
不満が出る原因として、『リビング階段のメリットとデメリットを正確にわかっていない状態で計画したから』というのが大きいと思います。
リスクを知っていてそれを選んだのであれば、後悔もなく不満も出ませんよね?
後悔しないためにもリビング階段のメリットとデメリットを知識として知っておくことはとても重要です。
リビング階段のメリット:家族同士のコミュニケーション
リビング階段の一番のメリットは家族同士のコミュニケーションです。
帰宅後に家族の顔も見ず二階の部屋に上がってしまうのではなく、一度リビングに顔を出して、ただいまと挨拶をしてから階段を上がる。
という動線ができるのがリビング階段です。こういった間取りを作ることによって親子間のコミュニケーションが自然と生まれます。
これは教育学的な観点から生まれた間取りで、一声かけるだけでもあるのとないのとでは全く違うという発想です。
家族同士がお互いに程よい距離感で意識できることがリビング階段のメリットです。
リビング階段のデメリット:冷暖房効率の低下
リビング階段は冷暖房効率が低下します。
なぜなら、リビングに階段があることでリビングから階段、二階の廊下まで空間が繋がり、空調をしなければいけない容積が増えるためです。
特に冬場の暖房効率が著しく低下します。温かい空気は上昇するという特性があるため、リビングを温めてもどんどん暖気は2階に上がります。(二階の廊下が温かくなるというメリットはあります)
意匠性のあるスケルトン階段などはデザインは良いのですが、その代償も少なからずあるいうことを知っておかなければいけません。
リビング階段のメリットを活かしてデメリットを解消する方法
リビング階段のメリットを活かしてデメリットを解消するためには、リビングと階段との間に建具で仕切れる廊下を設ければ大丈夫です。
玄関→リビング→廊下→階段
という動線です。
廊下のスペースを必要としてしまう計画ですが、廊下は活用次第では良いこともあります。
最も効果的なのはトイレ。
廊下に面してトイレを設けたら、リビングと繋がった空間にトイレがあるよりも視線や音を解消することができます。
廊下が程よいワンクッションを生み出すためです。
積極的に廊下を設けてリビング階段の空調問題とトイレの音、視線の問題を同時に解決しましょう。
階段室には二階を重ねない
階段室には基本的には二階を重ねないようにしましょう。
なぜなら階段を下りているときに頭を打ちそうになるからです。

家具を移動するときなどもとても邪魔になります。引っ越しの時にいきなり壁を傷つけてします可能性もあります…。
階段室に二階を拡げるのは極力避けましょう。
もし重ねるとしたら二段目まで
どうしても二階の床を重ねたいなら何段目までならギリギリセーフかと言うと、二段目までならギリギリセーフです。
但し、以下の条件下の場合です。
- 天井高さ2400
- 蹴上200
- 二段目上の天井の角を斜めに現場加工
条件が変わったらそれに応じて判断を変える必要があります。
階段下は天井高さを考えて有効利用
階段下は何も利用しないのは勿体ないです。天井は低いですが有効活用しましょう。
具体的な活用例は以下の通り。
- 収納
- トイレ
- 隠れ部屋
それぞれ注意点もあります。
収納
階段下の天井が低いスペースは収納として使用するのが最も有効に活用できます。
掃除用具や消耗品をストックしておく普段使いの物入れでも良いですし、奥行きを利用して中に押し込む季節ものの収納でも良いと思います。
トイレ
トイレにそもそも天井高さは必要ありません。階段下の低い空間でも何とか成り立ちそうです。
但し、天井高さがどれだけ確保できるかは必ず確認しましょう。
2000mm取れていたら十分ですが、1800mmだと人によってはとても低く感じます。
隠れ部屋
子供の遊び場として絶好のスペースです。子供は天井が低いところって好きですよね。
大きくなってからも読書スペースなどで使用できます。ビーズクッションなど置いたりするとなお快適に過ごせそうです。
また、ペットを飼っているご家庭はワンちゃんスペースや猫ちゃんのトイレスペースなどでも活用できるのでお勧めです。
まとめ:4つに注意して理想的な階段を計画
階段の計画で注意することは以下の4つです。
- 危険を回避する~蹴上は19センチ以内、蹴込は22センチ以上
- リビング階段をする際は冷暖房効率を考慮~廊下を設けて建具で仕切る
- 二階は階段室に重ねない~重ねても2段目まで ※条件あり
- 階段下は収納、トイレ、遊びスペースとして有効利用
以上のことを気を付ければ、階段の計画での失敗や後悔を防ぐことができます。