・自分にあった照明を選びたい…
・照明ではどんな失敗例があるのかな…
・照明で失敗しないためにはどうしたらいい?
この記事を読んで頂くと照明計画で失敗しない方法がわかります。
なぜなら、照明計画の失敗談を元に現役建築士である筆者が計画を検証しているからです。
年間15棟ほどの住宅を設計している筆者の日頃から気を付けていることや過去の失敗談もお話しています。
照明に対する悩みを持っていない人にも、より良い照明計画を考えるきっかけになるかもしれません。
失敗談を参考にしていただくことで照明の失敗を防ぐことができ、自分にあった照明計画を見つけることができると思います。
照明の種類
まず照明の種類にはどのようなものがあるのかを簡単に説明します。
それぞれの照明にメリットデメリットがあります。
シーリングライト

天井につける普通の照明。明るさの確保や調光機能が便利。
ペンダントライト

天井から吊り下げる照明。デザインが良いものが多くインテリア性に優れる。
ダウンライト

天井に埋め込む照明。すっきりした見た目でお手入れいらず。今現在最も使用される照明。
ブラケットライト

壁につける照明。壁を照らし、明るさとデザイン性の双方を確保。
スポットライト

ブラケットライトの一種で、首を振って照らしたい場所を照らすことができる照明。特定の場所を照らしたいときや、吹き抜けなどで使用される。
間接照明

光源を隠し、壁や天井に反射した光で柔らかく空間を照らす照明。雰囲気のよい空間を作りやすい。
フットライト

足元の照明。夜間に廊下や階段の足元を照らして視認性を向上させる。
スタンドライト

机や床において使用する補助照明。インテリアとしてや手元を照らす照明として使用される。
シャンデリア

ガラスの乱反射を利用した吊り下げの照明。華美な見た目とクラシックな高級感を演出する。
ダクトレール

ペンダントライトやスポットライトを移動して使用することができる配線用器具。
照明の失敗例
ありがちな照明の失敗例を記します。
たくさんの人が後悔しています。参考にして、二の轍を踏まないようにしましょう。
ダウンライトが暗い
今はほとんどの照明がLED照明。特にLEDのダウンライトは安いためよく使われますが、
『ダウンライトにしたけど、なんか暗く感じる…』
という声が非常に多いです。
アパート暮らしではほとんどの方がシーリングライト。比較するとダウンライトの方が暗く感じるという方がほとんどです。
これにはダウンライトの2つの特性が関係しており、
- ダウンライトは天井を照らさないから
- ダウンライトは直線的な光だから
というのが理由です。
天井を照らさないダウンライト
ダウンライトの真下はとても明るいです。
でも部屋全体を見た時に部屋の天井が暗いため『暗く感じる』のです。
シーリングライトのように部屋全体が均等に明るくないというわけです。
対策としては、間接照明を設けて壁や天井を照らすことで部屋全体が明るくすることができます。
また、多灯分散型(たくさん配灯して分散させる)にして調光機能をつけるのもお勧めです。
調光器を付けることで明るすぎというリスクも防ぐことができます。
光が直線的なダウンライト
ダウンライトの光は直線的で、真下方向に強い光を出します。
そのため部屋の端には明りが届かず、これまた部屋全体を見た時に暗く感じます。
部屋の端に照明があると対策ができるのですが、このときにお勧めなのがスタンドライトやフロアライトです。

どこでも持ち運びができてインテリア性もとても良いです。
ホコリがたまる照明
ペンダントライトやブラケットライト、またコーブ照明と呼ばれる天井を照らす間接照明はホコリがたまります。
モデルハウスなどでは見栄え優先でこういった照明を使っていますが、水平面には必ずホコリがたまり、掃除の手間がついてまわるので器具選びに注意が必要です。
対策としては、
- ペンダントライトを無くしてなるべくダウンライトを配灯する
- 間接照明はコーブ照明(天井を照らす)ではなくコーニス照明(壁を照らす)を使用する
などがあります。
直接見える間接照明
『間接照明なのに見えてしまう』という失敗はとても多いです。
その原因は検討不足につきます。人の目からどう見えるかを検討し、徹底的に見せない工夫をする必要があります。
検討してやっと隠したと思いきや、
- 窓に映って見えてしまう
- 遠くに離れたら見えてしまう
などということも考えれます。
間接照明は見えたら台無しです。
徹底的に隠すことができているか、よく検討しましょう。
間接照明を見せない対策
間接照明の光源を見せないために、
- 動線中に計画しない
- 行き止まりの壁面などを活用する
- 寸法の小さい器具を使用する
などの工夫が有効です。
配灯のミス
配当ミスがあると見栄えが悪い、明るくないなどの状況になります。
なぜならバランスを考えて整理整頓されていないと、天井面や壁面が照明で散らかっている様に見えるからです。
適切な場所に照明がないと当然必要な明るさも確保できません。
配当ミスの原因は
配当ミスの原因は以下の二つが多いです。
- どこを照らすのか、の検討不足
- 家具家電の寸法検討不足
順に解説します。
どこを照らすのか
どこを照らすのか、どこを照らしてはいけないのかを考えます。
例えば、玄関の照明は壁際に配灯すると空間が明るくなります。
壁に当たる光量が大きくなるからです。
一方でクツを脱ぐ足元を明るくしようとしたら玄関框(床とタイルの間。床の端っこ)の上に配灯する必要があります。
このように配当箇所は目的によって異なります。
家具家電の寸法検討不足
家具の寸法を把握しておかないと正確な配当はできません。
具体的には、
- ダイニングテーブルの真ん中にペンダントライトを配灯したいとき
- ベッドの端に合わせてブラケットライトを配灯したいとき
- テレビの後ろに間接照明を配灯したいとき
などに正確な寸法検討が必要になります。
コードカットの長さ
ペンダントライトはコードを切りすぎてしまうという失敗があります。
照明のコードは最初は長く設定されているため、天井の高さや器具の高さを考慮してカットすることがあります。このときに切りすぎてしまうのです。
コードが長いことで、
- 見栄えが良い
- テーブルなどの手元に光がおちやすい
というメリットがあります。一方で、
- 頭に当たりそうで邪魔になる
- テーブルに座ったときに低い位置に照明があると視界が悪くなる
というデメリットもあります。
適切なカット長さがわからないのであれば長めにしておいて、
- コードハンガーを利用する
- 中間コードを利用する
- カップの中で巻ける商品を利用する
などの対策が考えられます。



画像引用:https://search.rakuten.co.jp/
失敗しないための対策※部屋ごとに解説
それではどうすればこれらの失敗を防ぐことができるのでしょうか。
部屋ごとにお勧めの照明計画を解説します。
玄関は框と壁を照らす
室内には上がらなくても玄関の中までは来るという人もたくさんいます。それだけに玄関は実用だけでなく見栄えにも拘りたいところ。そこで、
『玄関は框と壁の両方を照らす』
という計画がお勧めです。
框上の明かりはダウンライトかブラケットライト、壁の明かりは間接照明かブラケットライトで配灯を。コストダウンが図るためにはダウンライトを壁に寄せて照らすのもお勧めです。
機能と見栄えを両方確保しましょう。
リビングは調光調色がおすすめ
リビングは一番長く居る場所なので明るさが欲しいですが、明るすぎるとインテリア性が損なわれます。
部屋は基本的には暗い方がかっこよいいです。(おしゃれなお店等は大体暗めで設計されています。)
そこでお勧めなのが明るさや光の色を調整できる、調光調色タイプ。
しっかりと明るさを確保したいときと、インテリア性を重視してトーンを落としたいときと、スイッチ操作部で簡単に調整ができます。
その他、補助照明(スタンドライトやフロアライト)を利用して調整できるようにするのもインテリア性も高くてお勧めです。
ダイニングはインテリア性と作業性を重視
ダイニングの照明はLDK一番の見せ場です。できればおしゃれなペンダントライトでインテリア性を上げましょう。
しかし忘れてはいけないのが、
『ダイニングテーブルは作業スペースでもある』
ということ。具体的には、
- 子供の宿題
- お絵かき
- パソコン
- 在宅ワーク
などです。読み書きをするにも絶好のスペースなので明るさも確保しましょう。
ペンダントの周りや間にダウンライトやスポットライトを配灯して系統を分けておきましょう。いざという時に明るくできるようにしておけば使い勝手も良くなります。
広いテーブルを食事のためだけに使用するのは勿体ないです。
キッチンは手元を明るく
キッチンは手元の明るさが重要です。
キッチンの真ん中にライトがあるだけではシンクや作業台に自分の影が落ちます。キッチンの真上に照明が必要です。
レシピを見ながらの料理などを考えると、手元がより明るい方が良いです。
照明は必ずしも部屋の真ん中に必要ではありません。特にキッチンは、手元最優先です。
寝室は暗くて問題ないし、寧ろ暗いくらいでよい
寝室を極端に明るくする必要はないと思います。
調整可能なシーリングライトなら問題ないですが、ダウンライトなどの場合明るくし過ぎないように注意しましょう。
特に寝た時に光源が目に入らないように注意しましょう。ベッドの足元などにライトがある程度で十分だと思います。また、フットライトやブラケットライトなどで弱い光を取るのも有効です。
寝室で明るさが必要だとしたらベッドメイキングくらいだと思います。少し暗めでOKです。
子供部屋は普通のシーリングがおすすめ
子供部屋は普通のシーリングがお勧めです。
成長に合わせて使い方も激しく変わる部屋なので、調整が効くライトが適しています。また、将来的に器具を変える可能性も高いため建築時につくり込み過ぎないためでもあります。
成長や好みに応じて部屋のテイストを変化させることができるようにインテリアの個性を強くし過ぎないことも重要です。
子供部屋は普通のシーリングが一番です。
廊下はダウンライトと保安灯がおすすめ
廊下はダウンライトが良いです。おそらくLEDの寿命であれば30年以上もつでしょう。スッキリ天井に埋め込めばお掃除も全く考える必要がありません。
センサーライトにしたいと言う声もありますが、センサーで照明がつくよりも保安灯がお勧めです。
理由は深夜トイレに起きた時にセンサーだと目が覚めてしますからです。
保安灯の明かりでトイレに行くくらいは十分にできますし、暗いときはスイッチでオンオフできるというのがつぶしが効いて良いと思います。
洗面脱衣室は昼白色
洗濯をする脱衣室は昼白色のライトにしましょう。
電球色のライト雰囲気はよいですが視認性が悪いため、洗濯物の汚れや、お化粧の色などが確認し辛いです。
寛ぐスペースではないので、機能性優先で問題ないと思います。
吹き抜けは壁を照らす
吹き抜けの照明は壁を照らす用にしましょう。
吹き抜けや勾配天井では壁を照らすことで空間が明るくなり、高さ方向に変化が出て空間の迫力が増します。
逆に天井面よりも高い壁面を照らさなければ吹き抜けの迫力は半減し、昼は開放的だけど夜はあまり広く感じず冷暖房効率が悪いだけ…という感じになってしまいます。
スポットやブラケットがお勧めです。
外部はセンサー式。明るくないので注意
外部照明はセンサーで玄関ポーチや庭の植栽を照らすようにしましょう。
明るさセンサーにしておくと暗くなったら自動点灯し、タイマーを付けておくと自動消灯するので便利です。
注意点は、多灯でも明るくないということ。庭でBBQ用にとたくさん設けても明るさは全然足りません。外は家の中と違い壁や天井がないため光が分散し、明るくならないのです。
玄関や植栽のライトアップ用など、ポイントでの利用をお勧めします。
まとめ:失敗談を参考に目的に合わせた照明を
好みや目的に応じて適切な照明計画は変わってきますが、多くの人が感じることやたくさんの失敗例は参考になる人も多いと思います。
重要なことは共通していて、
- 照らすべき場所を照らす
- 目的を明確にする
ということです。
なんとなくで決めないで、
- この部屋で何をするか
- この照明で大丈夫か
- この照明が本当に必要か
を考えることが重要です。