間取り

2階浴室の失敗例を解説。建築士が考えるメリットデメリット

・2階に浴室を設けた時のデメリットは…?

・2階に浴室ってどのような失敗例があるの?

・間取りを考えるときに何を1階にして何を2階にしたらいいのかわからない。

2階浴室はメリットとデメリットがあります。

この記事は実際に生活してみないとわからない2階浴室のメリットデメリットを明確にすることが目的です。

某ハウスメーカーで12年間150棟の住宅を設計した現役建築士が実経験を元に検証し、実際に住んだ方の声を元に失敗例や成功例を解説します。

この記事を読んで2階浴室のメリットデメリットを理解して住宅の計画の参考にしていただければ幸いです。

2階浴室について

浴室は1階にあるのが当たり前です。そもそもなぜ浴室を2階にという発想が生まれるのでしょうか。

主な理由は以下の3つのケースが考えられます。

  • 1階のスペース争いに敗れてやむなく
  • 2階の方が利便性が高いと判断して
  • メインの居住空間がそもそも2階のパターン

順に解説していきます。

1階はスペースの取り合いになる

1階にスペースが不足して浴室が2階になるケースがあります。

なぜなら、通常の間取りでは1階はメインの生活空間です。リビングや玄関のスペースなどに比べると水まわりスペースの優先順位が下げられることがしばしばあります。

このようにやむなく2階浴室にならざるを得ないケースもあります。

物干しは2階が当たり前の家庭も

浴室は2階の方が都合が良いとされるのは2階で洗濯物を干すご家庭です。

浴室が2階ということは脱衣所、洗濯機も2階です。もし洗濯物を干すスペースが庭ではなく、2階のベランダやフリースペースだとしたら洗濯の家事動線は抜群です。

近年は共働き世帯が増えてきています。2020年の労働政策研究・研修機構の国勢調査によると、日本の共働き世帯数は専業主婦世帯数の約2倍です。

専業主婦世帯と共働き世帯 引用:労働政策研究・研修機構HP https://www.jil.go.jp/

家庭のあり方や家事の仕方が大きく変化している現代では、生活に合わせた間取りのあり方も変化していて当然かもしれません。

狭小地では2階がメインの生活空間

都心部の狭小地ではメインの居室空間が2階にあるのは珍しいことではありません。

なぜなら土地が狭く、隣家が近く、1階部分に日当たりや通風が十分に期待できないためです。

リビングが2階にあれば浴室なども2階にあっても何ら不思議ではありません。

2階浴室のデメリット

2階浴室にした方からよく聞くのは以下の4つです。

  • 生活動線が悪い
  • 音が下階に響く
  • 間取りの計画が難しい
  • 老後が心配

これが実際に2階浴室を経験した人の生の声です。

生活動線が悪い

2階浴室は生活動線が悪くなります。

お風呂に入るのは毎日のこと。その度に2階に行き、入浴後は1階に下りていると階段を上り下りする回数は増えます。

お風呂のあとに寝室に行けば動線は良いのですが、入浴の時間帯を考えるとそれが可能な生活パターンは限られてきそうです。

いちいち2階に上がらないといけないというのはやはりデメリットでしょう。

音が下階に響く

お風呂の音は下階に響きます。

なぜならお風呂は多量の水を使います。お湯を張り、入浴し、排水する際に大きな音が出るのは必然です。

また洗濯もかなりの水を使います。最近の洗濯機は節水効果が高いですが、それでも一度の洗濯で100リットルほどの水を使用します。

2階浴室にするからには、音問題は避けて通れない課題です。

間取りの計画が難しい

2階浴室は間取りに苦労します。

なぜなら、前述の音の問題や浴室の直下に必要な天井点検口を考えると、浴室の下にはリビングや和室(寝室)などの部屋は計画できないからです。

間取りを考える際、浴室の下は収納などの非居室しか計画できません。

浴室を2階に上げると間取りの自由度が増えるわけではありません。

老後が心配

2階浴室は老後に不安が残ります。

なぜなら生活に欠かせないお風呂が階段の上にあるからです。

車いすを想定した廊下の設計やゆったりしたトイレを設計したところで、浴室までの階段が昇れなかったら意味がありません。

老後を考えるとワンフロアで生活が完結する間取りが安心ですよね。

2階浴室のメリット

一方、それでも以下のようなケースでは2階浴室がおすすめです。

  • 2階で洗濯物を干す
  • 1階にスペースをなるべくリビング等に当てたい
  • 風呂からの眺めを重要視したい

デメリットを凌駕するメリットになっていれば積極的に計画するべきです。

生活動線が良い

確実に良くなる生活動線があります。それは家事動線です。

洗濯→干す→畳んで収納 の動線が、うまく計画すると短くまとまるかも知れません。

前述の通り、共働きのご家庭には特におすすめで、2階に洗濯物を干す習慣のあるご家庭は洗濯の手間が省けます。

入浴の度に2階に上がる手間よりも、省かれた家事動線の方が大きければ2階浴室の価値がグンとアップします。

1階の間取りが充実し易い

水まわり(浴室、脱衣所)が1階から消えるとその分1階の間取りが充実します。

なぜなら浴室、脱衣所だけで少なくとも4畳ほどの空間があるからです。そのスペースをリビングの広さや収納に当てるとかなり充実します。

そもそも2階建ての間取りの場合2階は空間が余り易いです。余裕のある2階に水まわりを持ってきて1階を充実させるのとスペースのバランスは良くなります。

長く居るリビングをなるべく大きくしたいですもんね。

風呂からの眺めが良い

2階の方が日当たりも眺望も良いです。

お風呂から外を眺めたい、景色を楽しみたいという方は2階浴室が良いかも知れません。

但し、お風呂から外の景色を充実させるという点では庭を作り込むという選択肢もあります。造園や外構で工夫ができるためその点ではお風呂は1階の方が良いです。

1階と2階とどちらが窓からの眺めが良いかは土地条件によって変わってきます。

水圧は意外と落ちない

良く心配されるのが水圧の低下ですが、これは意外と落ちません。

なぜなら地域ごとに水道管の圧力は一定に保たれているからです。1階2階の高低差よりも更に高いところにある丘の上の住宅地が水圧が弱いなんてことがないのが何よりの証拠です。

階数よりは寧ろ給湯器の種類のよって受ける影響の方が大きいです。(電気式の給湯器は水道管の圧力を減圧しているため水圧が弱い)

まとめ:2階浴室にするときは動線と老後と下階の部屋を考えよう

2階浴室のメリットデメリットを正確に覚えておきましょう。

【2階浴室のメリット】

  • 洗濯の家事動線が良い
  • 1階の間取りが充実する
  • 風呂からの眺めが良い

【2階浴室のデメリット】

  • 生活動線が悪い
  • 下階に音が響く
  • 間取りの計画が難しい
  • 老後が心配

以上を踏まえた上でライフスタイルに合っていれば、2階浴室はとても素敵な間取りの発想となります。